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研究内容

お知らせ

1.胆汁関連トランスポーターに関する研究

ラボでの科学者

2.肝細胞の極性に関する

研究

ペトリ皿のクローズアップ

3.多発肝嚢胞の発症メカニズムと嚢胞形成機序の

解明

実験

4.臨床研究

顕微鏡
1.胆汁関連トランスポーターに関する研究
(Kagawa T. Hepatobiliary transport of bile acids. In “Bile Acids in Gastroenterology: Basic and Clinical”, 2017, pp. 9-25)

胆汁中には胆汁酸、ビリルビン、リン脂質、コレステロールなどが含まれていますが、中でも胆汁酸は胆汁分泌のdriving forceです。胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成され、胆汁酸トランスポーター(BSEP、ABCB11)により毛細胆管に排出されます。胆管を通って、一旦、胆嚢に貯蔵されたのち、食事に刺激で胆嚢が収縮すると、十二指腸に排出されます。小腸で脂肪や脂溶性ビタミンの吸収に関与した後、そのほとんどは回腸末端で再吸収され、門脈を通って肝臓に戻り、NTCPやOATPにより肝細胞に取り込まれます(腸肝循環)。細胞内の胆汁酸濃度はFXRやFGF19などを介したnegative feedback機構により厳密にコントロールされています。

図表.jpg

(1)BSEP(bile salt export pump, ABCB11)

BSEPは肝細胞の毛細胆管膜に局在し、胆汁酸を毛細胆管に排出するトランスポーターです。BSEPの遺伝子異常により先天性胆汁うっ滞症(PFIC2、BRIC2)が発症することが知られています。我々は以前からBSEPの生化学的解析を行っており、BSEPの機能発現に糖鎖修飾が必須であること(Mochizuki K, et al. AJP 2007)、BSEPの遺伝子異常と表現型との関連(Kagawa T, et al. AJP 2008)、ウルソデオキシコール酸のBSEPへの作用(Kagawa T, et al. J Gastroenterol 2014)について報告してきました。また、薬物性肝障害におけるBSEPの遺伝子異常についても報告しました(Kagawa T, et al. Drug Metab Dispos 2015)。

(2)OATP1B1, OATP1B3(organic anion transporting peptide, SLCO1B1, SLCO1B3)

OATP1B1, OATP1Bは肝細胞の類洞側に局在し、ビリルビンや胆汁酸、さらに様々な薬物の取り込みに関与しています。OATP1B1, OATP1B3の両方の遺伝子異常により、体質性黄疸の一つであるRotor症候群が発症することが報告されました。我々は日本のRotor症候群患者において遺伝子異常を行い、日本人特有の遺伝子変異を見いだしました(ClinVar Variation ID: 977762, Kagawa T, et al. Hum Mutat 2015)。さらに、これまで原因不明であったICG排泄異常症がOATP1B3の変異により発症することを報告しました(ClinVar Variation ID: 981013, Kagawa T, et al. Hepatology 2017)。

 現在、最も興味を持っているのは薬物性肝障害などによっておこる胆汁うっ滞症の発症機序をあきらかにすることであり、様々な方向から解析しています。また、BSEPの胆汁排泄能を上昇させる薬物のスクリーニングしており、胆汁うっ滞症の治療薬開発を目指しています。

1.胆汁関連トランスポーター
2.肝細胞の極性に関する研究

肝細胞と肝細胞が接触するとその間に毛細胆管が形成され、極性が生じます。細胞内で合成された蛋白は細胞内輸送機構を介して、目的である毛細胆管に移送されます。このような極めて高度なシステムはどのように制御されているのかに、長年興味を持っており、その機構をあきらかにするために、マウスの初代肝細胞やiPS細胞を用いて研究を進めています。

2.肝細胞の極性
3.多発肝嚢胞の発症メカニズムと嚢胞形成機序の解明

多発肝嚢胞は肝臓の10個以上の嚢胞が生じる疾患です。嚢胞が巨大化し、血管、胆管、周囲の臓器などを圧迫して様々な症状をおこすことがあります。本疾患は ciliopathyの一種で有り、cilia(繊毛)に関連する蛋白の遺伝子異常で発症することが報告されていますが、日本を含むアジアでは原因遺伝子が不明な症例が多く存在します。我々は全国の共同研究者と症例を集積し、遺伝子解析を行うとともに、iPS細胞を用いて嚢胞が巨大化するメカニズムについて研究しています。

3.多発肝嚢胞の発症メカニズム
4.臨床研究 

当教室では様々な肝胆膵疾患に興味を持ち、多くの臨床研究を行っています。代表的な臨床研究をあげます。なお、これらの研究は東海大学臨床研究審査委員会の承認を得て行われています。

(1)脂肪肝の疫学調査

脂肪肝は飽食の時代の象徴として、年々罹患率が増加している疾患です。脂肪肝の中には脂肪肝炎(NASH)に進行し、肝硬変、肝臓がんになることがありますが、その実態はよくわかっていません。当教室には1975年の病院開院以来、肝疾患患者に対して行われた肝生検標本が保存されています。そこで肝生検で脂肪肝あるいはNASHと診断された症例を約20年間経過観察し、予後調査を行っています。また、糖尿病や高血圧、心血管系疾患を発症する方がどの程度おられるか調査しています。

(2)脂肪肝における臨床研究

脂肪肝は糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病を合併することが多い疾患です。脂肪肝に有効な薬剤は今のところありませんが、糖尿病や高脂血症などの薬剤に脂肪肝を改善する可能性のある薬剤があります。当教室ではそのような薬剤の脂肪肝改善効果を検証しています。

(3)原発性胆汁性胆管炎(PBC)

PBCは骨粗鬆症を合併しやすい病気です。PBCに合併した骨粗鬆症に対して、最近発売されたRANKL阻害剤であるデノスマブの有効性を検証する臨床研究を行っています。

(4)肝細胞がん

進行肝細胞がんに対する薬剤として、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が使われています。効果がある反面、様々な副作用もあり、治療の継続が困難になることもあります。当教室では東海大学医学部看護学科に先生と一緒に患者さんの副作用をチェックし、適切に対応するとともに、副作用の発現や患者のQOLについて研究しています。

4.臨床研究
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